どの国でも尊敬されるグローバルリーダー像とは?

どの国でも尊敬されるグローバルリーダー像とは?

某日本企業でオーストラリア赴任を控えた方から興味深い話を聞いた。赴任前にその国に短期出張するケースは多いが、その方も短期出張で訪れた赴任予定の支社の廊下で、つい現地ナショナルスタッフ同士の会話を立ち聞きしてしまったという。

 その会話によると、彼らは今回新たに赴任する日本人支社長に対して「前任者のように窓を拭いたり掃除したりするのは困る」「トップはトップらしく振る舞ってほしい」と話していたそうだ。これは実はよくある話で、以前、韓国の日系企業から日本本社に研修に来ていた韓国人社員が、部長が掃除している姿にショックを受け、転職したという話もある。

 日本では、小学校から教室や廊下の掃除は当り前だが、欧米だけでなく、アジア諸国でも掃除は掃除会社から派遣された掃除人が行うケースが多く、ましてや会社の職場で責任者が窓を拭いている光景などありえない。

 日本では位が高い者が、低い者しかしない仕事をすると評価されたりするが、普通はありえません。ある日本企業のフランス支社では、日本から赴任したばかりの駐在員がオフィスの掃除を始めたところ「掃除婦なら日本から呼ばなくてもフランスにいる」「掃除婦の仕事を奪うのはよくない」と皮肉を言われたそうだ。

 仏教の影響が強く、下からの叩き上げが基本の日本社会では美談に思われることも、海外では逆効果というケースも少なくない。たとえば日本では忙しそうにしているのがいいため、社内を小走りで動き回ると「働き者」と思われるが、アメリカでは小間使いとしか思われない。リーダーは堂々としていてほしいとよく言われる。

  日本では謙虚さが重んじられ、堂々としていると傲慢とか権威主義と思われがちだが、リーダーらしさは国によって違いがある。それを間違えるとリーダーシップのない人間が日本から送られてきたなどと言われる。とはいえ、前出のオーストラリアでは、自己紹介やプレゼンで過度に自分の実績を誇り、必要以上に大げさな表現でプレゼンを行うと眉をひそめられる。

  アメリカ赴任経験のある日本人が支社長としてドイツに赴任し、大げさに自分の実績を自画自賛するような自己紹介をしたら、ドイツ人のマネジメントクラスが不快を露にした例もある。横柄な態度で中身がないほどみっともないことはないが、掃除をしたら尊敬される国は多くはないのも事実。

  ただ、どの国でも尊敬されるリーダーとは、考え抜かれたヴィジョンや目標を提示し、部下の意見に注意深く耳を傾けながらも明確な方向性を打ち出し、その実現のために妥協なく、不屈の精神を持って取り組む姿勢を持つ人物であることは確かと言える。

  そのためには自分の考え方を誰もが納得できる分かりやすい言葉で伝え、部下からのフィードバックを重視しながら、組織や集団を力強く率いていく姿勢が何より重要だ。過信や傲慢はすぐに正体が分かってしまう一方、必要以上の謙虚さも問題。オーストラリアの例では、もし前任者が尊敬を勝ち得た上で窓を拭いているなら、さらに尊敬されたかもしれない。

 コラム70 11・21・2017記

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