「西洋人が疑問に思う上司絶対の上下関係」グローバル研修No1講師が語る

「西洋人が疑問に思う上司絶対の上下関係」グローバル研修No1講師が語る
韓国の朴槿恵大統領を窮地に追い込んだ親族や知人に利権誘導する体質は、今に始まったことではない。韓国では権力者の親族や近い知人、友人には当然のごとく権力や利権が与えられてきた。だから、一族から大統領が出れば、一族は安泰であり、就任期間に必死で利権を漁る習慣が根付い
ている。

 民主主義が成熟していない多くの国々で、同じようなことが起きている。南アフリカのズマ大統領は、親しい富豪が閣僚人事に介入していた問題で今、窮地に立たされている。民主主義が最も成熟したアメリカでさえも、クリントン元国務長官のようにメール問題で公私を分けられないなどということもある。

 韓国では、国民感情が法以上に国を動かすと言われている。有罪と決まったわけでもない朴大統領と関係者へのバッシングは非常に激しい。日本より心情を大切にする国と言われる韓国で、韓国初の女性大統領で期待された朴大統領の裏切りを見た時の異常なまでのバッシングは、韓流スター
を自殺に追い込む世論の残酷さ同様、理解に苦しむものがある。

 それでは、民主主義が韓国よりは成熟した日本では、親族や友人への利権誘導や情実人事はないのだろうか。公官庁や大企業は基本的に法的に禁じているものの、地方自治体では、未だに談合は消えないし、公共事業の落札に目に見えない力が加わったりしている。豊洲市場の工事落札率が
99%というのは、どこから見ても不自然というしかない。

 ここで問題になるのは、権限を持つ者と従う者の関係性にあると言える。儒教的人間関係の強い韓国や日本では、組織の上下関係は職場以外でも継続する。以前、子供がパリにある日本人学校に通っていた時、母親たちの人間関係が、夫の会社内の上下関係に左右されているのを見て驚いたこ
とがある。

 日本で起きるパワハラも、儒教的上下関係の例外ではない。欧米諸国では基本的に組織の上下関係は便宜的であって、私生活に及ぶことはない。
だから、自分の上司に異常なまでに媚びへつらったりしない。今年、トヨタ自動車の副社長に就任したフランス人のルロワ氏は「上司を喜ばせるために働くな」「会社のために働け」と発言し、衝撃を与えた。

 これは、日本的な人間信仰とも言うべき、上司絶対という考え方への警告であり、西洋人が疑問に思う日本的経営の中心に位置する縦社会の忠誠心を批判するものともとれる。会議で上司がいたら部下は意見を言わず、上司の意見に異議を唱えるような部下は評価されないという慣習への批判
でもある。

 民主主義は基本的に人間を神格化しない。大統領も不完全な人間で過ちも犯す。組織のリーダーも同様で、特に企業組織の場合は、実績を出すリーダーが人格者や正義感の強い人とは限らない。なぜなら利潤追求は奇麗事では済まされない側面もあり、大企業のトップが不正会計を指示した
例もある。

 人の上に立ち、権力と巨額の金を動かす人間が高いモラルを守り続け、傲慢にならずにいる事は簡単なことではない。自分を見失い、自分のしている事の善悪も「企業のため」という大義名分の前に曇ってしまう場合も多い。部下も「上司のため」に悪事を働くこともある。

 それでも、過去の日本では実績だけでなく人徳があるリーダーと、それを滅私奉公と忠誠心で支える部下がいたことでなんとかやってこれた。だが、そんな上下関係を支えるメンタリティは消えようとしている。形だけが残ってしまい、中身の精神性がない忠誠心だけが存在しているとも言える。韓国を見ながら、日本は人間信仰文化を卒業できたか吟味する必要があるように思う。

コラム57 11・4・2016記

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