「外国人に理解されるコミュニケーションの基本は?」企業向けグローバル研修講師が語る。

「外国人に理解されるコミュニケーションの基本は?」企業向けグローバル研修講師が語る。

外国人上司に理解してもらえない理由は?

 日本の医薬品メーカーで、英国人の上司の下で働く30代の男性から相談を受けたことがある。彼は上司が自分のことを理解してくれていないことに不満と不安を抱えていた。しかし、よく話を聞いてみるとその英国人上司に対して、自ら積極的に自分を分かってもらう努力はしていないことが分かった。

 彼曰く「日本人にとって、いい上司とは、部下がいろいろ言わなくても理解してくれている人ですよ」と。実は逆も言えて「いい部下は、上司がいちいち言わなくても上司のやってほしいことをよく理解し、結果を出す人」と言うことになる。いわゆる上司の意向を悟って行動するのが理想的部下となる。

 この関係は、社会が単一の価値観で動き、そのコミュニティーにいる人々が非常に似た考えを持つ場合には機能する。最低限のコミュニケーションで全てが通じる世界だからだ。日本では寒村や小さな島の住民に極端な形で残っている。日本がムラ社会と言われてきたのも非常に似たコンテクスト(文脈)を持つ人の集まりから出来上がった独特の人間関係があるからだ。

 これはお隣の国、韓国、中国、東南アジアに広く分布しており、農耕社会に顕著に見られる強い相互依存の人間関係にある。そんな社会では互いが理解し合うことは容易で、当然、相手が自分を容易に理解してくれるとの思い込みが強い。暗黙の了解、以心伝心などの言葉がそれを表している。

 ところが現実にわれわれが住んでいる社会は多様化し、同じコンテクストを共有しているとは言いがたい状況だ。常識への依存度は低くなる一方なのに、常識への依存度が非常に強かった時代のコミュニケーションスタイルが維持され、異なる価値観を超えるような意思伝達方法は未だに身についていない。

 日本社会そのものが複雑化すると同時に、グローバル化が進み、日本人とはまったく異なる発想を持つ人々と協業する時代に入っている。そんな時代にムラ社会でしか機能しなかった根拠のない相互理解の期待感をもとにしたコミュニケーションスタイルは、さまざまな問題を引き起こしている。

 例えば、日本の本音と建前の極端な使い分けは世界的にも有名だ。無論、日本とは真逆とされるアメリカでも建前は存在する。大統領選挙で本音
ではトランプを支持し、投票しながら、社会的批判の多いトランプ支持は表立ってしなかった有権者は多い。だが、日本の場合は実は本音が建前によって押しつぶされ、本音そのものが未成熟状態にある場合が多く、つい周囲の人に合わせてしまう習性がある。

グローバル社会での相互理解の基本は?

 文化の違いを超えた相互理解の基本は、オープンマインドで互いが理解しやすい透明性を確保することにある。ところが本音そのものが未発達で、それを相手にロジカルに伝えるコミュニケーションスキルも習得していない多くの日本人は、コミュニケーショントラブルを起こしやすい。

 コミュニケーションの基本は、情報、知識、思考、感情のシェアにあると言われるが、日本人は特に感情のシェアが弱い。なぜなら、それは本音に属するものだからだ。お隣の韓国人は、感情で動く国民と言われる。そのため感情表現も豊かだ。しかし、相手が自分を理解してくれるという期待感は高く、その期待が裏切られると、その反動は深刻なまでに大きい。

 日本人の場合、自分から伝える努力はしないで「自分を分かってほしい、理解してほしい」という気持ちだけが非常に強い。それを女性的性格という人もいる。いずれにせよ受け身的姿勢は多様化する社会ではマイナスにしか働かない。相手に期待するより自ら発信する努力が求められている。

コラム58 12・16・2016記

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