「グローバルリーダーは“双方向型”報連相」グローバル研修実績No1講師が語る

「グローバルリーダーは“双方向型”報連相」グローバル研修実績No1講師が語る

トップと幹部の報連相は機能していたのか?

東京都が建設した豊洲新市場の建物地下の空洞問題が、都政を揺るがしている。老朽化した築地市場の豊洲への移転には、巨額の税金が投じられているだけに、都政への都民の不信感は増大するばかりだ。今後、詳しい調査が実施されても、誰一人として責任を取る人間はいないだろうという失望感もある。 

 公務員は、公費着服など公務員規則に違反しない限り、何百億円の損害を都に与えたとしても、業務のミス等で解雇されることはない。民間企業のように背任行為で罰せられることもない。あるとすれば降格や左遷人事、出世できない等だが、それも組合に守られているために厳しくはできない。 

 さらに日本の慣習として、ミスは組織が吸収し、個人の罪は問われない。モラル・ハザードという都合のいい言葉もある。今回も問題の本質は、東京都の組織のガバナンス欠落と言われている。特に大プロジェクトになると責任は分散しがちで、問題が起これば責任のなすりつけあいになる。 

 問題が発生するのには原因があり、その原因となる要素が、どこで見過ごされたのか、あるいは放置されたかが解明されなければならない。同プロジェクトは石原氏、猪瀬氏、舛添氏の3人の知事によって受け継がれた。小池新知事になって初めて発覚した問題だが、多くの専門家は、歴代知事には事実は知らされていなかっただろうと指摘されている。 

 専門家委員会による指摘を無視して、盛り土をしないまま建設会社に建設を指示したのは東京都側の幹部職員であることは言うまでもないことだ。つまり、彼らは変更を認識しながら建設を決行し、その変更を知事に報告せず、都のホームページで虚偽の内容を掲載し続けたことは隠蔽以外の何物でもない。

  そこから見えてくることは、意思決定のプロセスとトップと幹部職員間の報連相が機能しなかったことを意味している。

根底から間違っているポイントは?

 このコラムで何度も指摘したことだが、部下が上司に対してする報連相こそが、仕事の進捗管理で最も有効という思い込みは、根底から間違っている。

  人はさまざまな動機で嘘をつき、作り話をし、事実を隠蔽するものだ。自分の評価を下げることを避ける保身のためだけに嘘をつくわけではなく、時には組織を守るため、支出の辻褄を合わせるため、ある業者や人物を守るためなど、さまざまな動機がある。しかし、その嘘や作り話、隠蔽が組織に有効に働くことは、まずありえない。

  本来、報連相は意志決定者と部下の双方向で行うべきものだ。特に意志決定者は、その位置にいる者でしか分らない情報を必要としている。それは通常、部下には分らない。

上司が変わらないといけない点は何か?

だから、上司は自ら情報収集するアクションが必要になってくる。そのツールの一つが最近よく指摘される質問力だ。部下が嘘をついたり、事実を隠蔽したりできるのは、意志決定者の質問力不足と信頼感の問題だ。 

 これは部下の問題ではなく、信頼されるリーダーの姿勢が問われている問題だ。では、信頼され、尊敬される上司になるにはどうしたらいいのか。日本では御神輿経営といって、誰が神輿(リーダー)を担ぐかを重視してきた。神輿に乗るリーダーは権威主義に陥る。途上国で見られる典型的パターンだ。

 この古く、間違った意識を「自ら組織だけでなく、その主役である部下を思いやり担いでいく」というふうに完全に逆転する必要がある。自分ではなく、人のために生きる精神にリーダーが切り換えることで信頼関係が醸成され、嘘や隠蔽体質は改善されるようになるという話だ。

 コラム55 9・13・2016記


安部雅延 (あべ まさのぶ)
グロバール研修講師。フランス・レンヌの国際ビジネススクール講師。国際ジャーナリスト。研修実績:日産自動車、日立、日本通運、東芝、富士通、NEC、ニッスイ、ホンダロジスティックス、DeNA、三菱東京UFJ銀行、フィリップス、HSBC。
著書『日本の再生なるか』(財界通信社)、『下僕の精神構造』(中経出版)、訳書『愛するモンサンミッシェル』(ウエストフランス社)など。


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