人事部必見!中国人社員に伝えたい「ビジネス日本語メール」8ポイント!プロの日本語研修講師が語る!

人事部必見!中国人社員に伝えたい「ビジネス日本語メール」8ポイント!プロの日本語研修講師が語る!

人事部必見!中国人社員に伝えたい「ビジネス日本語メール」8ポイント!プロの日本語研修講師が語る!

  

「すみません。これ、見てくれる、いいですか?」

 これは、日本語を学ぶ中国人の方が、筆者にある書類のチェックを依頼する場面で、実際に言った言葉です。

 普段から、外国人社員の方の日本語に対して、「なんとなく違和感がある」と気になってはいても、それをご本人になかなか説明できず、どのように日本語力を伸ばしていけばいいかわからないという方もいらっしゃるかもしれません。

 アイザックのビジネス日本語研修では、外国人社員の方々一人ひとりに合わせた方法で、日本語でのメール作成から電話対応に至るまで、細かく丁寧に指導しております。

 今回は、中国の大学教員として、中国人学習者100名以上と接してきた筆者が、中国人によくあるメールの書き方を例とし、実際の研修で何をポイントに指導しているかをご紹介いたします。

 日本語研修一例:メールの作成練習

 「日本語は流暢に話せるのに、ビジネスメールとなると自信がない……。」

 このような学習者には、実際に具体的なケースを想定してメールを作成してもらい、よく使う表現を何度も練習しながら、メールの書き方を自然に身に付けられるようサポートしています。

 例えば、次のようなケースです。

 ・昨日、取引先とのメールで、来週月曜日に打ち合わせをすることが決まった

・来週、急に出張に行かなくてはならなくなり、先方に日時の再調整を依頼する

  

以下は、上のケースを想定した練習で、実際に学習者が書いた文面です。

  

 ポイント1:中国語と日本語の語彙の区別

これは初級から中級にかけての中国人に多いのですが、中国語の語彙と日本語の語彙を混同してしまっていることがあります。

例えば、上のメールの件名に「回復」とありますが、中国語学習経験のない日本人にとっては、「一体何が回復したのか」と意味が分からないでしょう。中国語での「回复」とは、「返信」を意味し、私たちがよく「RE:」のついた件名を見るのと同様、中国語のメールの件名にもよく「回复」がついています。

他にも、中国語と日本語では、同じ漢字を使うにも関わらず、意味が異なる語彙も多く見られるため、学習者には注意が必要です。

  

ポイント2:宛名の書き方

中国語のメールの典型的な書き方として、宛名の後に「:」をつける習慣があります。日本語ネイティブレベルの上級者から初級学習者に至るまで、このような中国的な書き方で日本語のメールを書く方も少なくありません。これは間違いというわけではありませんが、日本語でビジネスメールを書くときの一般的な形式としては、宛名の後には何も書かないことが多いと説明しています。

これは、日本における個人的な経験ですが、企業に勤めている方からのメールでは、宛名の後に何も書かれていないことが圧倒的に多く、筆者の卒業した大学では、宛名の後に「、」をつける先生方がよくいらっしゃったと記憶しています。

各会社や部署といった所属先によっても、メールの慣用的な書き方や言葉遣いは変わってきますので、学習者に対しても、上司や先輩社員のメールをよく見ておくよう勧めています。

 

ポイント3:時制、時間の流れの表し方

今日でお別れでもない学習者から、「お世話になりました」とメールをもらうことが今まで何度あったことでしょう。

上のメールで、日本語母語話者なら、「お世話になっております」を使うところですが、このような時間の流れに関する表現も学習者が間違いやすいポイントの一つです。

さらに、この場合は、取引先に宛てるビジネスメールであり、「~ています」ではなく、「~ております」と、謙譲表現を用いるというハードルもあるため、最初から決まり文句として覚えておくのも一つの手でしょう。

学習者には、日本人がそれぞれの表現をどのように使い分けているのか、具体的な使用場面とともに理解してもらえるよう心掛けています。

 

ポイント4:改行で読みやすく

学習者のレベルを問わず、長文が改行されずに書かれているメールも散見されます(日本人にも改行しない人はいますが……)。学習者がメールを書く練習をするときは、受け取る相手が読みやすいよう、改行する習慣をつけてもらっています。

 

ポイント5:二人称の使い方

職業柄、筆者は日本語にあまり慣れていない外国人と接することも多く、今まで「あなた」と呼ばれたことは数え切れません。最近は、大ヒット映画『君の名は』の影響なのでしょう、主題歌の流行も相まってか、「君」を使う学習者まで複数出てきました。

もちろん、学習者には決して悪気はないのですが、学習初期段階からこのような呼び方が癖になってしまっていると、それを直すのもなかなか大変です。

中国語では、「あなた」に当たる「你」や、それよりも丁寧な二人称「您」が特定の個人に向けて使われることが普通であり、その感覚で日本語の「あなた」を捉え、多用してしまう学習者も少なくありません。そういった学習者には、まず、日本人がどのような時に「あなた」や「君」を使うのか、具体的な使用場面とともに提示し、それでもつい「あなた」と言ってしまった時には、「あなた」を相手の名前に置き換えてみるよう促しています。

 

ポイント6:依頼の仕方

「――する、いいですか」というお願いは、初級~中級レベルまでの中国人学習者からよく耳にする言い方です。文末に添えて承諾を求める言い方である「――, 可以?」という中国語の影響もあるのでしょう。

また、「~ていただく」「~てくださる」などといった授受動詞の使い方、「~させていただいてもよろしいでしょうか」といった使役形と組み合わせた表現などは、学習者が特に混乱しやすいポイントですので、丁寧に指導しています。

 

ポイント7:メールの結び方

日本人は、ビジネスメールの終結部に「よろしくお願いいたします」という表現を使いますが、中国人からは、「谢谢」で結ぶメールをよくもらいます。上のメールは、まさしく「谢谢」を文字通り「ありがとうございます」と翻訳してしまった結果で、非常に違和感の残る結び方になってしまっています。

何かを依頼されると同時に「ありがとうございます」を使われると、「え?こちらはまだ何も承諾もしてないのに?」と日本人なら感じることでしょう。

学習者には、単に文法や単語を暗記してもらうのではなく、日本語として自然な談話の締めくくり方や、決まり文句の使い方についても徐々に練習してもらうようにしています。

  

ポイント8:署名の位置

こちらも、自分の署名を右寄せにするという、中国人によくある書き方です。

ポイント2で指摘した宛名の書き方と同様、間違いというわけではありませんが、日本の一般的なビジネスメールでは、署名も文章と同じ左揃えで書くようお伝えしています。

  以上に挙げた8つのポイントはほんの一部に過ぎませんが、このように、学校で日本語を学んだからといっても、すぐに完璧なアウトプットができるようになるわけではありません。

 私たちにとっても、外国語を学んで自然な会話をする、さらにはビジネスシーンで適切な表現を使いこなすまでのプロセスが容易ではないように、これまで日本語を学んできた外国人社員に対しても、さらなるトレーニングやサポートが必要だといえるでしょう。

 

日本語講師  小山 多三代

日本語教室・スクールへの お問合せ

法人向けレッスンへの
お問合せ

資料請求

各種資料を郵送にてお送りします。最寄りのスクールを選択してください。

各種資料のPDFを、メールにてお送りします。お問合せ先のスクールを選択してください。

体験レッスン

最寄りのスクールを選択してください。