なぜ、中小企業の2世、3世経営者は心配されるのか?

なぜ、中小企業の2世、3世経営者は心配されるのか?

 大手銀行が主催する中規模以下の企業経営者、それも創業者の息子や孫の経営者たちを集めた勉強会に講師として招かれたことがある。講演の主題は日本再生のシナリオと大きなものだったが、実は受講者の関心がそこにないことに大いに失望させられた。

 丁度、創業者社長向けの講演を行って数カ月後だったため、その対照的反応に衝撃さえ受けた。講演後の質疑応答で2世、3世の受講者たちは、フランスのヴァカンスや食べ物に話が集中し、自分の事業の行く末に関する真剣さを微塵も感じなかった。絵に描いたような厳しさのなさは、創業社長らが次々に日本経済の先行きについて意見を求めた時とは対照的だった。 


前代未聞の世界情勢不安

 景気の本格的回復が確認されない日本、予測を覆したアメリカのトランプ政権誕生、英国のEU離脱、フランスに公的選挙経験のない39歳の大統領が誕生し、発足1年も絶たない新党が議会の過半数を占める事態、中国経済の不安定化など、日本も世界も前代未聞の状況が毎月のように起きている。

  安全保障で日本は平和ボケと言われるが、ビジネスの世界にもボケが拡がっているのかと悲観的になった。東芝は基幹事業の半導体部門の売却に日本企業に積極的に手を挙げていない。東芝の経営危機は、ビジネス上の失敗に起因するというよりは、不正会計などの隠蔽という企業内で起きた不正行為が原因している。

  大企業の停滞は、下請け事業を頼りとする中小企業を直撃しているが、我慢できなくなった中小企業は、すでに独自に中国やベトナム、タイに進出している。しかし、そこで成功している企業は多いとも言えず、超ドメスティックな中小企業がいきなりグローバルなビジネス環境に適応するのも人材面で課題が多い。

  加えて、中小企業の2世、3世経営者に緊張感がなければ、その深刻さは想像以上だ。なぜなら、日本経済は、これまで優秀な技術を持つ中小企業によって支えられて成り立ってきたからだ。友人の経験豊富なコンサルタント会社の社長は「以前は、コンサルタントの話など聞く必要はないという創業者が多かったが、今、彼らは謙虚に頭を下げて学ぼうという姿勢がある」と言っている。

  ところが2世、3世経営者には、新しいビジネスモデルを必死で開発しようという経営者たちもいる一方、現状維持で満足し、豊かな環境で育った自分の生活の充実の方に忙しい者も少なくないのが現状だ。それにすでに創業者は亡くなっている例も多い。


いま2世、3世経営者に必要な事とは?

  確かに仕事も楽しみながらやる方が効果的というのが、今の常識だ。私生活も充実させ、メリハリを持って生活するのがベストの状態とも言える。しかし、状況を正確に把握、分析し、状況変化に迅速に対応しなければ成功はできない。その状況判断が今ほど難しくなっている時代は過去にない。

  巨額な損失など株価に影響する事柄に責任を持てない大企業経営者が不正に手を染め、責任を分散させ、保身に走るケースもあるが、目を背けたくなるような現実に遭遇した時にこそ、リーダーの真価が問われる。中小企業も同様だが、判断力も決断力も持たない2世、3世の経営者もいる。 

 無論、そんな経営者のいる会社は淘汰されているのだろうが、日本経済を考える時、彼らが覚醒することは、非常に重要だと思わざるを得ない。

  

コラム64 6・15・2017記


 

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