アマゾンCEOのライフスタイル

アマゾンCEOのライフスタイル

今や世界一の富豪といわれる米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)の話は示唆に富んでいる。特に意志決定者としての発言として「1日3つの良き決断ができるよう心がけている」との言葉は興味深いし、日本の経営者との違いは歴然としている。

  米首都ワシントンのエコノミック・クラブが913日主催したイベントで、約1400人の聴衆を前にベゾス氏は、まず自分の日常について語った。

 10時前には会議の予定を決して入れないようにしていることと、夕方5時には帰宅するよう心がけていることを明らかにした。

 「早寝早起きして、朝はのんびり動き回るのが好きだ」と語るベゾス氏は「新聞を読み、コーヒーを飲んで子供と朝食を共にすることを好む」からだそうだ。「夕方5時までには帰宅の途に就くようにしている」と語り、さらに8時間は睡眠を取るようにしていると語った。

  理由は、すっきりした頭で正しい判断、良き決断が出きるようにするためだ。誤解のないようにいうが、自宅のガレージで本のネット販売を始めて、今やアップルに次ぐアメリカ第2の収益をあげ、50万人の社員を擁する企業経営者の話だ。結果がないのに、10時出社、5時帰宅だけ真似する経営者の話ではまったくなし、そうする資格もない。

  プライベートな時間を大切にしている理由をベゾス氏は「経営幹部の優先する仕事は、限られた数の質の高い決断を下すことにあるからだ」と説明している。「より良い思考ができ、エネルギーも高まり、気分もよくなる」と彼は言う。そしてベジス氏は「1日に3つの良き決断を下せれば、それで十分だ」といい、「とにかく自分にとって可能な限り質の高いものでなければならない」と語っている。

  経営幹部が判断を誤れば、どんな優秀な社員を何人抱え、どんな優れた技術を持った会社といえども、成果を上げられず、社員は日々の業務で消耗し、報酬は上がらず、会社も低迷することになる。逆に優れた経営幹部は社員一人一人のスキルを引き出し、短時間で大きな成果を出せるように業務設計する。

  トップダウンなアメリカ型の意思決定は、コンセンサス重視の合議制の日本型意思決定スタイルとは違い、リーダーに対する考え方もかなり違

う。だからといって中央集権的なフランスなどとも異質だ。ベゾス氏がいう「決断」は、経営判断を下すものだが、適切な判断を下すには、常にリフレッシュされた頭脳が必要という話だ。

 ベゾス氏は自社の株価についても言及している。短期的な株価の上げ下げに一喜一憂するのは時間の浪費だと社員には教示しているそうだ。つまり、本当の企業価値は長期的評価で得られるものという哲学だ。そして「いかにスタートアップ精神を維持するかを大切にしたい」「大企業ではあるけれど、小さな会社のような心と精神を保ちたい」と語っている。

  その小さな会社の心とは、常に顧客や消費者と向き合い、彼らが何を望み、何を必要としているのかを考えながら、真摯にビジネスに望む謙虚な姿勢だ。今は子供の教育分野での新事業に取り組んでいるという。

  先行きが見通せない今の世界を前に正しい経営判断を下すことは容易ではない。良き決断のために柔軟で自由な思考、ビジネス的直感を研ぎ澄ますために何をすべきかは個人差もある。しかし、謙虚さを忘れず、常に新鮮な心を持ってビジネスに取り組む姿勢には見習うべきものがありそうだ。

 コラム80 9・25・2018記

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