急がれる外国人経営幹部との協業スキル育成

急がれる外国人経営幹部との協業スキル育成

グローバル人材育成に関わってきた筆者としては、今、日本企業が新たな課題に直面していることを感じています。それは非日本人の管理職クラスとの協業スキルを向上させるという課題です。すでに1999年にフランスの自動車メーカー、ルノーと業務提携した日産自動車には、COOとしてゴーン氏が就任し、トヨタ自動車はフランス人のルロワ氏が副社長に就任している。

 この流れは、大企業のトップだけでなく、中小を含め、部長クラス以上の管理職に異なった文化を持つ人の協業にも繋がっている。日本企業の国内での外国人雇用数は、厚生労働省の発表で2016年に100万人を超え、今は推計130万人いわれている。ただ、今や大都市のコンビニでは外国人従業員が普通になっている一方、管理職登用は未だ数%にとどまっています。

 しかし、海外からの投資やM&Aにより、国際人材交流が活発化する中、管理職クラスの外国人が国内でも増えるのは確実と見られる。そのため、海外から来日する管理職クラスの人間に日本の企業文化に馴染んでもらうための人材育成だけでなく、彼らを迎える側も協業に関わるマインドセットを迫られています。

 来日者エグゼクティブに日本的意思決定プロセス、終身雇用や年功序列など雇用に関わる慣習、ビジネスマナーなどを理解してもらうことは当然必要ですが、文化のダイバーシティ効果を考えるなら、日本側もマネジメント手法を再検討する必要がある。グローバルマネジメントとは、異なった文化的背景を持つ協業者が互いの国の文化を超えた未知の次元を開拓していくことだからです。

 そこで必要なのは、外国から来た人間に日本的ビジネス文化を教える次元にとどまらず、日本側の経営者及び管理職クラスの根本的な意識変革が必要。ところが経験重視の日本のビジネス文化では経験知が優先され、特に管理職クラスの意識変革は非常に難しい現実がある。

 私の経験では、グローバル企業への転身など社運を懸けた重要なプロジェクトで、社長自ら若い社員に混じって研修に参加し、謙虚に新しいものを学びとっていこうとするような会社は、確実に成長を手にしているケースが多い。

 変化の目まぐるしい今日のビジネスの世界では、時代を読み間違えば、会社が持つビジネスモデルがまったく通用しなくなり、倒産に追い込まれるケースもありうる。英国の某銀行で、日系企業担当の外国人営業マン向け研修を行った際、日本では管理職にならなければ、年功序列といっても50歳後半から給与が下がる賃金カーブのグラフを見せて、議論が白熱したことがある。

 その時、日系銀行から転職してきた日本人幹部が「50歳を超え、子育てが一段落すると生活コストが下がるので」などと説明したことで、議論に火がつきました。多くの非外国人にとって、家族の事情と賃金がリンクする話は、到底受入れられる話ではなかったからです。

 それと、アジアの高度スキル取得者が最も働きたくないのが日本といわれ、原因にキャリアパスや業務評価基準が不明確なこと、さらにライフワークバランスがとれていないことなどが挙げられています。その他、新卒採用制度など、日本文化が生み出した日本人にしか通用しないものが沢山ある。

 そのため、世界的に評価を得ている日本企業で働いてはみたものの、失望して会社を去る例も少なくありません。この管理職の多文化環境での協業は、今後、新たなテーマとして注目が予想されます。

 コラム81 10・20・2018記

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