グローバルリーダーはジェネラリスト
一般常識として欧米企業は人事において専門性を重視し、日本はジェネラリスト重視の傾向が強いと言われる。日本では新入社員はできるだけ社内でさまざまな経験を積ませるために、人事を繰り返すことが多いのに対して、欧米では専門性が重んじられ、職務詳細(ジョブ・ディスクリプション)が採用時に明確に定められ、その職種しか与えられない傾向が強いからだ。
しかし、管理職に限って見れば、その常識は当てはまらない。業種にもよるが、まず、大前提として管理職枠と一般職枠は別枠で採用されており、一般職は技能職を含め、専門スキルが採用の基準となり、日本では、一般職から管理職になる可能性もあるが、欧米企業ではほとんどない。
管理職枠の採用は通常、高学歴で専門性が高いだけでなく幅広い教養、スキルを身につけ、ビジネススクールで学んだりしている人が対象となる。一般職から稀に管理職に抜擢される例もあるが、いずれにせよポテンシャルの高い社員は入社後、さまざまな経験を積ませながら、ジェネラリストとしてのスキルを磨くことになる。
日本のたたき上げと違うのは、若い時から管理職のポジションを与え、管理職としてのスキルを磨いていく点だ。たとえば医薬品会社であれば、医学的知識は当然必要だが、それ以外のたとえば経済、法律などの知識も学ぶ必要がある。さらにはマネジメントのスキルを高めるため、入社後にビジネススクールで学ぶよう指示される事もある。
また、グローバル化に対応するため、海外赴任経験を数カ国で積ませる場合もある。そうした中で総合的なジェネラリストとしてのスキルを養成し、キャリアアップしながら、より重要なポジションに就いて行くことになる。
実は、欧米先進国では、半世紀以上前から、世の中に存在する数百種類の職種や職位の標準化が行われており、それぞれの標準的報酬も指標として公開されている。逆に言えば自分のなりたい職業で生涯どの程度稼げるかも見通せるため、より高い報酬を得るための学習やスキルも明確にしやすい点は、日本とは大きく異なる。
この職業や業務内容の標準化こそが転職を容易にしており、年功序列と関係なく、一般職でも管理職でも自分の持つ経験やスキルをアピールして、適応した職場に転職できるようになっている。標準的基準が定められておらず、終身雇用と年功序列が少なからず残っている日本企業では、転職は今でも容易ではなく、管理職も一般職もジェネラリストとして育成する傾向が強い。
裏を返せば、専門性が低い一般職と指導力のない管理職を生むリスクが日本にはあると言える。グローバル化が進むに連れ、会社への貢献度という勤務年数でポジションや給与を決めるシステムは、機能不全に陥る可能性が高い。
さらに日本的人事制度では、外国からの優秀な人材を惹きつけるのが困難なことが表面化している。つまり、普遍性の乏しい経営スタイルがグローバル化で行き詰まりを見せているとも言える。そのため、確実に有能なリーダーを確保するための採用基準と、彼らを養成するシステムを早急に再構築することが望まれている。
コラム72 1・14・2017記
<グローバルリーダーはジェネラリスト>