「日系企業リーダーの課題と解決策2016」グローバル研修実績No1の講師が語る。
管理職をめざすフランスのビジネススクール
私がフランスのビジネススクールで教鞭を取り始めて以来、学生たちに課される企業研修プログラムのレポートには常に興味をそそられてきた。
通常、研修期間は半年から1年間に及ぶが、彼らの体験論文は、逆に研修を受けた企業の内情を知ることにもなって面白い。
業務経験のない頭でっかちで幼い学生たちだから、見える物も少ないと思われがちだが、彼らは自分のスキルアップに貪欲なだけでなく、好奇心も強く、純粋な目で企業を見渡すことができる。それに研修先が就職先になる可能性は高いので、自分に合う企業かどうかを必死に確かめようとする。
彼らの最も高い関心事は、限られた期間で何を学べるかだ。フランスでは、もともとビジネススクールに来る学生は優秀で、管理職をめざす場合がほとんどだ。だから、短期間にスキルを習得できる企業に人気が集中する。日本のような終身雇用でのんびりと、さまざまな部署を回され、最初は単純な仕事や雑用ばかりやらされる企業には関心がない。
グローバル時代のキャリアの考え方
グローバル企業では、組織と個人の関係は主従関係ではなく、愛社精神や組織への忠誠心よりは、特化したスキルを持つ個人の集合体として運営されている。人の出入りも激しいし、目的雇用、期間雇用という考え方もある。当然、社員は働くこと=キャリアを積むという考えになる。そのキャリアをより高くで買ってくれる企業に転職する。
そんな働く環境では、個人のスキルを引き出し、生かし育ててくれる企業が高い評価される。このスキルアップは当然、生産性を意味し、効率性が高く、短時間で高い利益を産むことは、企業にとっても、被雇用者にとってもWin-Winの関係となる。
なぜなら、日本人以外は、いかに短時間働いて高い報酬を得て、プライベートな時間を楽しむかで凌ぎを削っているからだ。
グローバル企業のリーダーに求められること
だから、グローバル企業のリーダーには、個人のスキルを引き出し、それを生かす組織づくりが求められる。このことは家族経営と言われた日本企業でも、まったく同じことが言える。スキルの低い従業員を多数抱えるよりは、スキルの高い人間が少数で高い利益を得る方が得策だからだ。
日系企業の課題と解決策
その意味では、スキルアップに貪欲なビジネススクールの学生にとっては、日系企業は魅力に欠けている。とはいえ日系企業が欧米で高い利潤を挙げていることも無視できない。その理由はどこにあるのだろうか。それは高い品質の製品を産み出す技術力であったり、きめの細かいサービスであったり、企業内の高度なチームワークのネットワークにあると言えそうだ。
日本人は気づかずにいる場合が多いが、阿吽の呼吸でチームが動く姿は西洋人にも中国人にまねできない。日本企業では一人一人のスキルの最低ラインは世界一高いが、個人個人のスキルが非常に高いかと言えば、残念ながらそうでもない。
だから、個人のスキルアップに指導者がもっと注力すれば、日本企業もグローバルに開かれた魅力的企業となりうると密かに思っている。そのためには個人個人にもっと自由な裁量権を与え、個人のスキルアップに重心を移す必要がある。