「グローバル経営は公私Win-Win」グローバル研修実績No1講師が語る。
日本の台頭がグローバルビジネス研究発展の一因に
ハーバード大学の交渉プログラム運営委員を務めるジェズワルド・W・サルキューズ教授は、『グローバル交渉者』の著書としても知られ、グローバル交渉のエキスパートだ。同氏の何冊かの著書を読んで気づくことは、ビジネス研究の分野でグローバルビジネス研究が発展した一因に日本の台頭が影響したことが大きかったことだ。
それまで欧米先進国、特にアメリカは世界のビジネス分野で支配的存在だった。ところが1970年以降の日本経済の世界的台頭により、アメリカ人の意識は変更を余儀なくされた。それだけでなく、世界で最も優れていると思い込んでいた西洋文明自体が、異質な日本の脅威に晒された。彼らは戸惑い、文化を読み解くことの重要性に気づき、グローバルビジネスの研究は発展した。
日本研究がヨーロッパで始まる
それに引きずられる形で、ヨーロッパも1980年代後半から日本研究を始めた。フランスでは1992年にフランス初となる日本的経営を学ぶ日仏経営センターが国立レンヌ大学大学院内に設立された。当時、筆者は同センターの設立顧問を務めたため、ヨーロッパ内の日本研究、とりわけ経営や企業文化に関する研究の状況を把握することができた。
ただ、ヨーロッパは西洋文明という括りとは別に、言語も文化も違う多様な文化の集合体だったことから、文化の違いがビジネスに与える影響についての研究は進んでいた。特にオランダには、国民特性を指数化し分類したホフステッドなど優れた異文化研究があり、今もビジネス研修などで使われている。
一方、研究対象となった日本でも、1980年代、外国人による日本論と同時進行で土居健郎や山本七平など、日本人論を展開する識者が現れた。つまり、日本の台頭は、それまで独善的だった西洋人の意識変革に一石を投じる形となった。そんな背景の中で今、グローバル研修などが行われている。
ところが、世界に大きなインパクトを与えた日本も失われた10年から始まって20年以上のマイナス成長や低成長を経験し、その中で生まれ育った世代が今、ビジネスの最前線に立とうとしている。彼らは西洋の強烈なインパクトを与えた日本を知らず、彼らのせいではないにしろ、同質性の高い温室で育ったことでアイデンティティも弱く、異文化の前に極端な尻込みする人間になっている。
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複雑化している成功理由
ビジネスが成功すれば、自分を自慢し正当化するが、弱体化すれば弱気になるというのは単純すぎるのではないか。実は成功した理由は複雑で、その時の世界情勢も大きく影響している。冷戦で莫大な資金と優秀な人材を軍に投入していた東西陣営の中で、唯一ビジネスに集中できた日本は、漁夫の利を得たに過ぎなかった部分もある。
グローバルビジネスは「公私win-win」マネージメント
最優先課題は精神面の変革
精神的に弱体化し、異文化耐性のない新世代を抱える日本のリーダーたちは、まずは若い世代の精神面の変革をどのようにするのかが最優先課題だろう。それも組織への滅私奉公的忠誠心ではなく、個人と会社がWin-Winの関係になるようなマネジメントが求められている。
仕事を楽しむことが強調されがちなご時世だが、Win-Winの関係はそれだけでもないだろう。むしろ、日本人の労働観や人生観そのものをリセットする時期が来ていると私は見ている。そこでは、まだまだ海外に学ぶものが多い。