「東京オリンピックを成功させるには」 グローバル人材育成研修実績No1の講師が語る

「東京オリンピックを成功させるには」 グローバル人材育成研修実績No1の講師が語る

東京オリンピックを成功させるには

1)  ヴィジョンやテーマを明確に示す

2)  ぶれずに大会を実現していくリーダー、意志決定者が絶対に必要

  2020年の東京オリンピックに向け、メインスタジアムの巨額な建造費に社会の批判が集中している。その話題の中で石原前東京都知事のコメントに注目が集まっている。それはオリンピックを仕切るだけの大物リーダーが日本に不在しているという話だった。同時に知事として2016年のオリンピック招致で奮闘した石原氏が、国際オリンピック委員会の西洋人の傲慢な態度に辟易したという話もしていた。

  欧米人の態度が横柄だという話は、友人でもある日本の外交に関わる外務官僚や日本企業の経営者、海外業務担当者からもよく聞かれる内容だ。しかし、私は彼らのコメントに賛同しない。なぜなら、欧米人は相手の出方次第で態度を変えているからだ。


 欧米人は相手の出方次第で態度を変える

  日本独特の相手に対する気配りや謙虚さは、欧米人にとって時として自信も判断力もない強者に媚びへつらう人間にしか見えないこともあるからだ。それも元を辿れば70年前に戦争に負け、アメリカの統治に屈した時代から、欧米人に手揉みするしかないという敗者の思い込みがあったからに他ならない。

 その間逆なのがギリシャだ。ギリシャは巨額の債務を抱え、役人たちは汚職にまみれ、大富豪の船主たちは税金を払おうとせず、破産寸前でユーロや欧州連合からの離脱の可能性も出てきている。それでも同国のチプラス首相や前財務相の態度の大きさは、大国ドイツをはねのける勢いだ。

 借りた借金を自分のだらしなさから返済できない人間が、債権者が要求する緊縮政策を拒否し、さらなる追加支援を要求する態度は、一人の人間とすれば、日本ではあり得ないことだ。しかし、一国の首相としては、たとえ小国でも大国から足元を見られるような態度は微塵たりとも見せない。

  30年以上、ヨーロッパ人とつきあってきた私としては、欧米人が傲慢なのではなく、日本人が自分の考えに確信が持てず、明確なヴィジョンを示せないことが最大の問題と見ている。リーダーはヴィジョンからぶれず、そのヴィジョンの実現のための確実な実行力を持つことが最も重要だ。 


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ロンドン・オリンピックの成功事例

 ロンドン・オリンピックのことを以前、このコラムに書いたが、彼らは英国の産業革命からのめざましい近代化の歴史を誇るとともに、弱者へのいたわりを重視するヴィジョンを打ち出すことで普遍的に人類に貢献していることを世界にアピールした。開会式で障害を持つ子供たちに国家を歌わせ、パラリンピックでの選手のロンドン市内パレードで過去最大規模の市民動員を成功させ、感動を与えた。 

 そんな普遍性を持ったヴィジョンが東京オリンピックにあるのだろうか。メインスタジアムのコストやデザインの問題を論じる時、誰も東京オリンピックのヴィジョン(テーマ)との整合性について話さないのは、ヴィジョンが抽象的で不明確だからに他ならない。 

 実は2020年のオリンピック開催都市として東京がアピールしたテーマは、「スポーツには、世界と未来を変える力がある」だった。それを熱く語るのが開催関係者であり、リーダーであるはずなのに、いつしかテーマとはなり得ない「おもてなし」が全面に出てしまっている。だから、誰もテーマとの整合性からメインスタジアムのデザインや建設費を議論しようとしない。 

「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」がテーマだとすれば、巨額な建設費はテーマに合致していないのは明白だ。東京都も観光スポットとして価値を高め、多様なイベント開催で有効利用する方に注意が向けられ、テーマとの整合性の議論は聞こえてこない。 

 ヴィジョンやテーマを明確に示し、そこからぶれずに大会を実現していくリーダー、意志決定者が不在していることは、何よりも懸念すべきことだと私は考えている。

 

安部雅延 (あべ まさのぶ)

国際ビジネスコンサルタント。欧米アジア・アフリカ地域での豊富なグローバルビジネス経験あり。フランス・レンヌの国際ビジネススクールで20年以上、グローバルマネジメント、異文化間コミュニケーション、交渉術、比較文化などの教鞭を取る。日本企業の研修経験豊富(日産自動車、日立、日本通運、東芝、富士通、NEC、ニッスイ、ホンダロジスティックス、DeNA、三菱東京UFJ銀行など多数)。さらにフィリップス、HSBCなど外資系企業も多数。特にグローバル人材開発に特化し、最新の理論、現在進行中のグローバルビジネスへの関与等による豊富な経験談、データ、実際に起きた事例を駆使するのが特徴。国際ジャーナリストとしても活躍し、雑誌などに寄稿。これまでに30カ国以上を取材し、世界の政財界、学者へのインタビューも多い。

著書『日本の再生なるか』(財界通信社)、『下僕の精神構造』(中経出版)、訳書『愛するモンサンミッシェル』(ウエストフランス社)など。

● グローバルマネージメント研修

http://www.isaac.gr.jp/business_course/program_global.html

この記事のまとめ

「東京オリンピックを成功させるには」 グローバル人材育成研修実績No1の講師が語る
2020年の東京オリンピックを失敗させない2つの絶対成功条件!

1) ヴィジョンやテーマを明確に示す

2) ぶれずに大会を実現していくリーダー、意志決定者が絶対に必要

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