外国人技能実習制度とは? 受入れ企業のメリットや、実習生のためにできることとは?

外国人技能実習制度とは? 受入れ企業のメリットや、実習生のためにできることとは?

 「外国人技能実習制度」をご存知ですか? 日本が先進国としての役割を果たし、国際社会との調和ある発展を図っていくために、日本の技能や技術または知識を開発途上国の人達へ伝えて母国へ持ち帰ってもらい、開発途上国が経済発展できるよう協力する制度です。

平成281128日に公布され、平成2911月1日に施行された外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号)に基づいて、新しい技能実習制度が現在実施されています。具体的にどのような制度なのか、現在実施されている制度について厚生労働省の資料をもとに紹介いたします。

 

旧制度からの改善点について

  

 旧制度から新制度へ移行した際、何が見直しされたのでしょうか。旧制度ではどのような点に問題があったのか、以下にまとめてみました。

 

【旧制度の問題点】

①政府間の取決めがない保証金を徴収しているなどの、不適切な送出し機関が存在していた

②監理団体や実習実施者の義務・責任が不明確であり、実習体制が不十分だった

③民間機関である(公財)国際研修協力機関が法的権限のないまま巡回指導していた

④実習生の保護体制が不十分だった

⑤業所管省庁などの指導監督や連携体制が不十分だった

 

このような問題点が、新制度では以下のように改善されました。

 

【見直しされた後の改善点】

①実習生の送出しを希望する国との間で政府間取決めを順次作成することを通じ、相手国政府と協力して不適切な送出し機関の排除を目指す

②監理団体については許可制、実習実施者については届出制とし、技能実習計画は個々に認定制とする

③新たな外国人技能実習期間(認可法人)を創設し、監理団体などに報告を求め、実地に検査するなどの業務を実施する

通報・申告窓口を整備し、人権侵害行為などに対する罰則なども整備し、実習先変更支援を充実させる

⑤業所管省庁、都道府県などに対し、各種業法などに基づく協力要請などを実施する。これらの関係行政機関から成る「地域協議会」を設置し、指導監督・連携体制を構築する。


技能実習生の入国・受入れまでの流れ、技能実習の流れについて

 

 技能実習制度は、「国際貢献のため開発途上国などの外国人を日本で一定期間(最長5年間)に限り受け入れ、OJT(実務を通して教育し、学ぶ職業訓練)を通じて技能を移転する制度」とされています。技能実習生は、入国直後に講習機関が設けられるのですが、その期間以外は雇用関係の下、労働関係法令などが適用されており、全国に約27万人在留(平成29年末時点)しています。

 外国人技能実習生の入国から、企業への受入れ、実習期間の流れは以下のとおりです。

 

技能実習制度受入れの流れ

 

【企業単独型】

日本の企業などが海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する型式

 

①海外の現地法人や企業の支店などと受け入れ企業が雇用契約を結ぶ

②日本国内の機構へ、受け入れ企業が実習計画を申請し、機構がそれを認定する

③受け入れ企業が地方入国管理局に外国人技能実習生の受け入れを申請し、入国許可を得る

④地方入国管理局から入国の許可を得た後、外国人技能実習生が日本へ入国し、実習を開始する

 

【団体管理型】

非営利の監理団体(事業協同組合、商工会など)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業などで技能実習を実施する型式

 

①監理団体と、送り出し国の技能実習生送出機関が契約を結ぶ

②監理団体が受け入れ企業に技能実習生受け入れの申し込みを行う。

③送り出し国で、技能実習生の応募・選考・決定が行われる

④受け入れ企業と技能実習生が雇用契約を結ぶ

⑤受け入れ企業は実習計画を作成し、監理団体へ申請する

⑥監理団体は機構へ、団体・実習計画を申請する。機構による調査を経て、主務大臣が団体を許可し、機構から実習計画認定を受ける

⑦監理団体が、地方入国管理局に申請を行い、入国許可を得る

⑧地方入国管理局に許可を得た後、技能実習生が入国する

⑨受け入れ企業で技能実習が開始され、監理団体は指導や支援を行う

 

技能実習の流れ

 

1年目(技能実習1号)】

入国:在留資格「技能実習1号イ、ロ」

講習(座学):実習実施者(企業単独型のみ)または、監理団体で原則2カ月実際する。(雇用関係なし)

実習:実習実施者で実施する(雇用関係あり)

※団体管理型:監理団体による訪問指導・監査

1年目が終わる頃、基礎級取得のため、実技試験および学科試験の受験を必ず行う。

 

2年目(技能実習第2号)】

在留資格の変更または取得

2年目に切り替わる前に、在留資格「技能実習2号イ、ロ」へと変更または取得する必要があります。

 ①対象職種:送出国のニーズがあり、公的な技能評価制度が整備されている職種

②対象者:所定の技能評価試験(技能検定基礎級相当)の学科試験および実技試験に合格した者

実習:実習実施者で実施する(雇用関係あり)

※団体管理型:監理団体による訪問指導・監査

 

3年目(技能実習第2号)】

実習:実習実施者で実施する(雇用関係あり)

※団体管理型:監理団体による訪問指導・監査

3年目が終わる頃、3級取得のため、実技試験の受験を必ず行う。

3年目を終えた後、1カ月以上一時帰国することが定められています。

 

4年目(技能実習第3号)】

在留資格の変更または取得

4年目に切り替わる前に、在留資格「技能実習3号イ、ロ」へと変更または取得する必要があります。

 ①対象職種:技能実習2号移行対象職種と同一

②対象者:所定の技能評価試験(技能検定3級相当)の実技試験に合格した者

③監理団体および実習実施者:一定の明確な条件を充たし、優良であることが認められる者

実習:実習実施者で実施する(雇用関係あり)

※団体管理型:監理団体による訪問指導・監査

 

5年目(技能実習第3号)】

実習:実習実施者で実施する(雇用関係あり)

※団体管理型:監理団体による訪問指導・監査

5年目が終わる頃、2級取得のため、実技試験の受験を必ず行う。

5年目を終え、帰国する。

 

移行対象職種・作業について

 

技能実習1年目を終え、2年目に入る際、または、3年目から4年目に入る際、第2号、または第3号の技能実習へ移行します。これまで実習生が習得してきた技能などの評価を公正に行うため、技能実習評価試験を行います。その試験を有する職種・作業の総称を、移行対象職種・作業といいます。

厚生労働省が公にしている技能実習2号以降対象職種の一覧は以下のとおりです。(平成29126日時点 77職種139作業)

 

1.農業関係(2職種6作業)

職種名:耕種農業

作業名:施設園芸、畑作・野菜、果樹

 

職種名:畜産農業

作業名:養豚、養鶏、酪農

 

2.漁業関係(2職種9作業)

職種名:漁船漁業

作業名:かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業

 

職種名:養殖業

作業名:ほたてがい・まがき養殖作業

 

3.建設関係(22職種33作業)

職種名:さく井 

作業名:パーカッション式さく井工事作業、ロータリー式さく井工事作業

 

職種名:建築板金

作業名:ダクト板金作業、内外装板金作業

 

職種名:冷凍空気調和機器施工

作業名:冷凍空気調和機器施工作業

 

職種名:建具製作

作業名:木製建具手加工作業

 

職種名:建築大工

作業名:大工工事作業

 

職種名:型枠施工

作業名:型枠工事作業

 

職種名:鉄筋施工

作業名:鉄筋組立て作業

 

職種名:とび

作業名:とび作業

 

職種名:石材施工

作業名:石材加工作業、石張り作業

 

職種名:タイル張り

作業名:タイル張り作業

 

職種名:かわらぶき

作業名:かわらぶき作業

 

職種名:左官

作業名:左官作業

 

職種名:配管

作業名:建築配管作業、プラント配管作業

 

職種名:熱絶縁施工

作業名:保温保冷工事作業

 

職種名:内装仕上げ施工

作業名:プラスチック系床仕上げ工事作業、カーペット系床仕上げ工事作業、鋼製下地工事作業、ボード仕上げ工事作業、カーテン工事作業

 

職種名:サッシ施工

作業名:ビル用サッシ施工作業

 

職種名:防水施工

作業名:シーリング防水工事作業

 

職種名:コンクリート圧送施工

作業名:コンクリート圧送工事作業

 

職種名:ウェルポイント施工

作業名:ウェルポイント工事作業

 

職種名:表装

作業名:壁装作業

 

職種名:建設機械施工

作業名:押土・整地作業、積込み作業、掘削作業、締固め作業

 

職種名:築炉

作業名:築炉作業

 

4.食品製造関係(9職種14作業)

職種名:缶詰巻締

作業名:缶詰巻締

 

職種名:食鳥処理加工業

作業名:食鳥処理加工作業

 

職種名;加熱性水産加工、食品製造業

作業名:節類製造、加熱乾製品製造、調味加工品製造、くん製品製造、

 

職種名:非加熱性水産加工、食品製造業

作業名:塩蔵品製造、乾製品製造、発酵食品製造

 

職種名:水産練り製品製造

作業名:かまぼこ製品製造作業

 

職種名:牛豚食肉処理加工業

作業名:牛豚部分肉製造作業

 

職種名:ハム・ソーセージ・ベーコン製造

作業名:ハム・ソーセージ・ベーコン製造作業

 

職業名:パン製造

作業名:パン製造作業

 

職業名:そう菜製造業

作業名:そう菜加工作業

 

5.繊維・衣服関係(13職種22作業)

職種名:紡績運転

作業名:前紡工程作業、精紡工程作業、巻糸工程作業、合ねん糸工程作業

 

職種名:織布運転

作業名:準備工程作業、製織工程作業、仕上工程作業、

 

職種名:染色

作業名:糸浸染作業、織物・ニット浸染作業

 

職種名:ニット製品製造

作業名:靴下製造作業、丸編みニット製造作業

 

職種名:たて編ニット生地製造

作業名:たて編ニット生地製造作業

 

職種名:婦人子供服製造

作業名:婦人子供既製服縫製作業

 

職種名:紳士服製造

作業名:紳士既製服製造作業

 

職種名:下着類製造

作業名:下着類製造作業

 

職種名;寝具製作

作業名:寝具製作作業

 

職種名:カーペット製造

作業名:織じゅうたん製造作業 、タフテッドカーペット製造作業、ニードルパンチカーペット製造作業

 

職種名:帆布製品製造

作業名:帆布製品製造作業

 

職種名:布はく縫製

作業名:ワイシャツ製造作業

 

職種名:座席シート縫製

作業名:自動車シート縫製作業

 

6.機械・金属関係(15職種29作業)

職種名:鋳造

作業名:鋳鉄鋳物鋳造作業、非鉄金属鋳物鋳造作業

 

職種名:鍛造

作業名:ハンマ型鍛造作業、プレス型鍛造作業

 

職種名:ダイカスト

作業名:ホットチャンバダイカスト作業、コールドチャンバダイカスト作業

 

職種名:機械加工

作業名:普通旋盤作業、フライス盤作業、数値制御旋盤作業、マシニングセンタ作業

 

職種名:金属プレス加工

作業名:金属プレス作業

 

職種名:鉄工

作業名:構造物鉄工作業

 

職種名:工場板金

作業名:機械板金作業

 

職種名:めっき

作業名:電気めっき作業、溶融亜鉛めっき作業

 

職種名:アルミニウム陽極酸化処理

作業名:陽極酸化処理作業

 

職種名:仕上げ

作業名:治工具仕上げ作業、金型仕上げ作業、機械組立仕上げ作業

 

職種名:機械検査

作業名:機械検査作業

 

職種名:機械保全

作業名:機械系保全作業

 

職種名:電子機器組立て

作業名:電子機器組立て作業

 

職種名:電気機器組立て

作業名:回転電機組立て作業、変圧器組立て作業、配電盤・制御盤組立て作業、開閉制御器具組立て作業、回転電機巻線製作作業

 

職種名:プリント配線板製造

作業名:プリント配線板設計作業、プリント配線板製造作業

 

7.その他(13職種25作業)

職種名:家具製作

作業名:家具手加工作業

 

職種名:印刷

作業名:オフセット印刷作業

 

職種名:製本

作業名:製本作業

 

職種名:プラスチック成形

作業名:圧縮成形作業、射出成形作業、インフレーション成形作業、ブロー成形作業

 

職種名:強化プラスチック成形

作業名:手積み積層成形作業

 

職種名:塗装

作業名:建築塗装作業、金属塗装作業、鋼橋塗装作業、噴霧塗装作業

 

職種名:溶接

作業名:手溶接、半自動溶接

 

職種名:工業包装

作業名:工業包装作業

 

職種名:紙器・段ボール箱製造

作業名:印刷箱打抜き作業、印刷箱製箱作業、貼箱製造作業、段ボール箱製造作業

 

職種名:陶磁器工業製品製造

作業名:機械ろくろ成形作業、圧力鋳込み成形作業、パッド印刷作業

 

職種名:自動車整備

作業名:自動車整備作業

 

職種名:ビルクリーニング

作業名:ビルクリーニング作業

 

職種名:介護

作業名:介護

 

※法務大臣が告示で定める職種・作業(1職種1作業)

職種名:空港グランドハンドリング

作業名:航空機地上支援作業

 

技能実習計画の認定手続きについて

 

 技能実習生を企業が受け入れる際、技能実習法に基づき、技能実習生ごとに「技能実習計画」を作成し、その技能実習計画が適当であることを、外国人技能実習機構(機構)から認定されることが必要となります。

 

 技能実習の受入れ形態は、企業単独型と、団体管理型の2種類があります。その他に、その形態ごとの第1号、第2号又は第3号の技能実習の区分に応じて、その都度申請者(技能実習を行わせようとする方)が計画を作成する必要があります。

 

 団体監理型の場合、監理団体(あらかじめ機構に対して申請の上、監理団体の許可を受ける必要あり)の指導に基づいて計画を作成します。

機構から技能実習計画の認定を受けた後は、別途、地方入国管理局において技能実習生の入国・在留に係る手続が必要です。

 

申請書や必要書類については以下のとおりです。

【申請先】

申請の受理は、申請者の住所地を管轄する機構の地方事務所・支所において行います。

札幌、仙台、東京、水戸、長野、名古屋、富山、大阪、広島、高松、松山、福岡、熊本

 

【申請方法】

郵送による方法のほか、申請者が地方事務所・支所に持参して行う方法があります。 郵送の場合、原則として書留での送付をお願いします。(対面で届き、かつ、受領印又は受領の際の署名を行い、かつ、「信書」を送ることができる方式)

 

【申請書】

地方事務所・支所にて配付するほか、機構のホームページからダウンロードが可能です。

 

【必要書類】

各申請における必要な添付書類については、機構のホームページにて案内済みです。https://www.otit.go.jp/

 

技能実習生を雇う3つのメリットについて

     

1.採用リスクを最小限に抑えた人材確保

外国人技能実習生を受け入れる企業は、毎年実習生の受け入れが可能なので、実習期間の3年で受け入れ枠の3倍の実習生を雇うことができます。外国人技能実習生が、日本人社員と共に経験を積むのは限られた期間ですが、期間内は実習生の力を借りることができます。受入れまでに時間がかかったり、書類作成をしたりと時間や労力のコストはかかりますが、その代わりに送出機関や監理団体が募集・選抜、教育した実習生が活躍してくれるので、採用リスクは最小限に抑えられます。

また、先に雇用されていた実習生が翌年以降に雇用された実習生に、日本語や作業のアドバイスもできるので、受け入れ企業の負担を軽減することも可能です。

 

2.やる気のある実習生の活躍で社内が活性化

 日本で身に着けた技術を母国に持ち帰り、役立てていくことが実習生たちの目標なので、やる気あふれる実習生を雇うことで、職場が明るくなり、活性化されます。また、社員も技術を教えることで改めて作業手順や業務内容を確認したり、日本の技術を伝えられることを誇りに思うようになれば、それが作業にも良い影響を及ぼすと考えられます。

 

3.グローバル企業としてのイメージアップ

 外国人技能実習制度は、日本の技術を実習生が母国へ持ち帰り、その国を発展させていくための制度です。つまり、外国人技能実習制度を企業が活用することで、国際貢献につながるのです。外国人技能実習生を受け入れた企業は、「グローバル企業」というイメージがつき、外国人実習生と日本人社員同士で異文化交流を行うことで、社内のグローバル化が進みます。海外拠点を作る時に自社の技術を習得している人材を確保できるので、グローバル企業としてのイメージアップを図ることもできます。

 

外国人技能実習生のために企業ができることについて

      

初めて外国人技能実習生を受け入れる企業にとっては、受け入れ当初は苦労することが多いことでしょう。しかし、外国人実習生も慣れない土地での新たな生活に不安を抱えています。言語、仕事、文化、風習など一から覚えることになり、戸惑うことも少なくありません。日本人社員とのコミュニケーションにまで気を配るのは難しい状況です。半年もすれば日本での生活や実習にも慣れ、日本人社員ともなじめるようになるでしょう。

 企業としては実習生になるべく良い環境で実習に集中して取り組んでもらうためにも、手厚いサポート体制の整った送出機関を選択することが重要です。また、実習生が日本の生活や言語に早くなじめるよう、日本語学習の場を提供することも外国人実習生のやる気に繋がります。

 日本語だけでなく、日本の生活や風習も教えてくれるプロの講師に依頼することで、外国人実習生が早く仕事になじめ、日本人社員とのコミュニケーションも取りやすくなります。講師歴の長い経験豊富なプロ講師が所属する外国語スクールに依頼することが近道です。実習生がモチベーションを維持して実習期間を過ごせるよう配慮することが、受け入れる企業の責任のひとつだと言えます。実習生のための良い環境づくりを目指して、実習生と社員が共に活性化すれば」、グローバル企業として前進していけることでしょう。

 

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