最近ますます交流が盛んになったベトナムと日本。

アイザック大阪校でもベトナム語レッスンが人気です

そんな人気のベトナム語を担当されている河目ティエン先生が

推進工法の通訳をされた際に書かれた随筆を本日は紹介させていただきます。

以下『月刊推進技術』に掲載されたティエン先生の随筆です。


私が推進工法に携わるようになったのは、

3年前に通訳で出会ったベトナム人のQUOCさんがきっかけでした。

彼は、清水建設㈱の技術者です。彼の紹介で3年前に(一財)下水道事業支援センターで

初めて推進工法の研修を通訳しました。


ベトナム人同士の気安さでいったん引き受けたものの、日頃、司法通訳や教育関係の

仕事をしていた私は、推進工法などの知識はまったく持ち合わせていませんでしたし、

イメージすらできませんでした。


まったくの素人で門外漢の私は、日本が誇る革新的な推進工法の技術を

ベトナムの方々にうまく伝えられるかどうか自信がなく、心配で眠れない日々が続き

ました。毎晩子どもを寝かしつけてから頂いた資料を広げると、難しい専門用語ばかりで

さっぱり意味が分からず、辞書を引いても載っていない言葉が沢山ありました。

というのも当時、推進工法は新しい技術であり、ベトナム語さえまだできていなかった

のです。それを初見聞のベトナム人に通訳して伝えようというのですから、

無謀な挑戦もいいところです。


それでも辞書を引き引き、主人に聞いたりして必死に勉強し、東京に向かう新幹線の中

でも富士山を探す余裕はなく、東京に付く直前まで最後の悪あがきをしていました。

そんな調子で正直よく分からないまま、初日の講義の通訳をしていました。

実際あまり理解できなくて不安が顔をのぞかせると、

同席していた石川様や福地様、河井様が優しく分かりやすい言葉に変えて説明してくれま

した。分かりやすくて本当に助かりました。


講義が終わった後、ホテルに戻ってまた必死に勉強しました。その甲斐あってか、

翌日の講義では、昨日より内容が理解できるようになって、すごくうれしかったです。


その後、様々な現場や、推進機や管を作っている工場を見学させて頂き、

推進工法のことをより理解できるようになりました。


ある現場を見学していたとき、私が推進工法について普通に話しているのを見て、

ある方が技術者と思われて、「この業界で女性が活躍するのは珍しいですね」と

声をかけられたときは、とてもうれしかったです。


そんなこんなで初めての推進工法の研修は無事に終了しました。苦労を共にした研修生

たちとは友達になり、今でも連絡を取りあっています。


その縁あって、今回は彼らの後輩が来日して研修を受けることになり、再び私も通訳

として参加することになりました。


今回は2回目ということで、前回とは違って心に余裕をもって楽しんで参加することができ

ました。研修生も前回は年上の方々でしたが今回は年下の若者ということで、先輩風を

吹かせるわけではありませんが、これまでに得た知識と経験を活かして自信をもって

応対することができました。


また、今回の研修では、ベトナムから見たベトナムと日本の文化や習慣の違いについて

発表を聞く機会があり、非常に興味深くて私なりに色々と考えさせられました。


例えば、「お客様は神様です」という言葉に象徴されるように、日本人は自分たちの立場

や利益追求よりもお客様を第一に考えて、様々なサービスで手厚くもてなそうとするのに

対して、ベトナム人は自らの利益追求を第一に考えて行動するという意見が発表され

ました。


それを聞いた私は、美容室で髪を切ってもらった後、店の外まで出てきて角を

曲がって見えなくなるまでお見送りを続ける店員さんの姿を真っ先に思い浮かべて

納得させられました。この「お・も・て・な・し」の姿勢は、外国の方が必ず驚く日本独自の

文化だと思います。


一方、ベトナムでは、過去の植民地支配や度重なる戦争、戦後の貧しさの中で生き抜か

なければならなかった歴史からでしょうか、生きるためには誰よりもたくましくなる必要が

あり、従って皆自分が第一であり、世の中は綺麗ごとではなくて、人生は競争であり、

絶対に他人に負けてはいけないという考え方があるように思います。それが極端になれ

ば、他人を出し抜いても構わない。騙された方が悪いという考えに至る場合もあるかも

知れません。


そのため、時に日本人の相手を優先する態度は、ベトナム人から見ると弱さや優柔不断

と捉えられてしまう場合があります。この人間や世の中に関する基本的な考え方の

相違は、ひいては国同士の関係にも発展する非常に重要な問題をはらんでいると考え

させられました。


また、仕事の仕方に関して、日本人は常により良いものを追い求めて、頻繁に会議を行い

検討に検討を重ねて慎重に物事を進めるのに対して、ベトナム人は業務改善には熱心で

はなく、得と思えば即決即断するとの意見が発表されました。


例えば、ビジネスの交渉場面で、日本人は決まって「検討します」ばかり答えますが、

この態度はベトナム人から見ると、果たして「YES」なのか「NO」なのかさっぱり見当が

つかない非常に煮え切らない態度に映ります。もし「YES」と答えていたら、ベトナム側は

その場で即決したのにと思う場面がよくあります。


勿論、目先の利益に飛びついた結果、騙されたり失敗したりすることはベトナムでもよく

あります。だからベトナムはダメなんだという意見もあるかも知れません。

確かによく検討してより良い条件で物事を進めることは大事であると思いますが、

一方でビジネススピードの面では、時にビジネスチャンスを逃してしまうことにもなり

かねないと思います。


そして、以上のような国同士の文化や習慣の違いについて最も重要なことは、決して

どちらか一方が優れているとか劣っていると考えるべきではなく、「違いがある」という

ことを正しく認めることであり、そのうえでどう付き合っていけばよいかをお互いの行動や

対話を通じて考えるべきだと思います。


ところで、通訳の仕事というのは、ただ単に言葉を翻訳して伝えるだけの仕事ではあり

ません。言葉はその国の文化や生活習慣のなかで意味を持って語られます。

そのため、異なる国の言葉を正しく相手に伝えるためには、互いの国の文化や考え方の

違いを理解することが必要不可欠です。


その一環という訳ではありませが、通訳が終わった後、食事や買い物に付き添ったり、

生活習慣や過ごし方などで困ったことがあれば相談に乗ってあげたりすることもあります。


前回は年配者が多かったので毎日のようにお酒を飲む機会があり、もともとベトナムの女

性は外でお酒を飲む習慣がないので大変でしたが、今回は皆若くて日本の街に興味津々

なので、秋葉原に行きたいといっては買い物に付き合ったり、とにかくよく動くので足が棒

になって大変でした。それでも、せっかく日本まで来たのだから、日本の良さをできるだけ

紹介して、日本について良い印象を持って帰ってもらいたいとの思いから、家電量販店や

ドラッグストアを何軒も梯子しました。


実は、通訳は外国と日本の窓口であり、日本に対する印象を決めるのも通訳次第という

面があると思っています。そう考えると、通訳という仕事の緊張感や重責といったものが

多少でも理解していただけるのではないでしょうか。大袈裟ですが、私自身が日本の

表玄関として見られる可能性があるため、通訳以外の場面でも自分自身の態度や

振る舞いなど色々と気を配らないといけないことがたくさんあるので大変です。


最後に、私自身は、これからも日本とベトナムの懸け橋として、通訳の仕事を通じて

その礎の一端となれれば幸いと考えています。


今回は、通訳の仕事が終わって一安心していたところ、原稿の執筆という難しい課題を

頂き、慌てふためきましたが、ここに改めて感謝を述べる機会を与えて頂き、

本当にありがとうございました。


これまでに関わったすべての方々に心から感謝を申し上げます。


特に印象に残った文は「国同士の文化や習慣の違いについて最も重要なことは、

決してどちらか一方が優れているとか劣っていると考えるべきではなく、『違いがある』と

うことを正しく認めることであり、そのうえでどう付き合っていけばよいかをお互いの

行動や対話を通じて考えるべきだと思います。」という箇所です。

アイザックのレッスンは語学はもちろん、文化や習慣も一緒に学んでいただけ、

「違い」に気づき、認め合うためのお手伝いをさせていただいております。

皆様が表玄関に立たれる前にお役に立つことができましたら幸いです


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