2月に入り節分、立春もすぎ、暦のうえでは既に春。日本人と同じように、北欧の人達も春を待ち望んでこの時期を過ごします。デンマークは夏に白夜を体験できる緯度ではありませんが、それでもいつまでも暗くならない美しい夏の空とちがって、冬は日の出が遅く日の入りも早く曇天が続きます。気持ちも沈みがちなそんな時期に、このFastelavn(ファスタラウン)の日が近づくと人々は「もうすぐ春だ～」と言う気持ちになって少しホッとします。

元々はキリスト教の宗教行事にちなんだものでした。同じようにカトリックの国々ではカーニバルとしてその行事が残っています。デンマークのFastelavn　は今では子供のお祭りですが、本来はキリストの復活を祝う復活祭・イースターの日曜日から逆算して49日目の日曜日に、この日以降、キリストの復活祭まで肉を断つ約束をする日としての意味合いFaste (断食)をloven(約束する)という言葉からきていると言われています。肉や魚を断つ前に謝肉祭・カーニバルをお祝いして少し羽目を外して御馳走を食べて、これから復活祭まで続く日々を全うしようという決意を表す大人のお祭りだったのです。

今では保育所や幼稚園で子供達が仮装して、紙で作った黒猫、それ以外にオレンジ、お菓子などを、先生たちが紙製の樽に入れて天井からつるして、子供達が順番にこの樽をたたいて、最初に樽を叩き落として黒猫を中から出せた子供がこの年の「猫の王様」「猫の女王様」として手作りの王冠をかぶせてもらって一日過ごす～という行事となっています。

昔は木樽に邪悪なものの象徴であった生きた黒猫を入れて高いところにつるし、その下を男たちが馬で駆け抜けて思い切り樽をたたき、木の樽を叩き割って黒猫を落として、邪気を払っていたそうですが、近年そういった残酷性のあるお祭りは姿を消し、子供達の仮装パーティーとなっています。

少し大きな子供達は、アメリカで秋に行われるハロウィーンのように近所の家を仮装して周り、お菓子や小銭をもらうという日でもあります。その際、子供達は決まった歌を歌いながらドアチャイムを鳴らします。

歌詞は「ファスタラウンは僕の名前、パンが欲しいよ～もしくれなかったら暴れるからね～パンをたくさん食べたいよ～くれなかったらイタズラするよ～」といった内容です。大人たちはこの日は見知らぬ子供達が突然来てもいいように玄関先にお菓子や小銭を入れた籠なんかを用意して、歌声が聞こえるのを待っていたりする楽しい日曜日です。今年は2月7日の日曜日です。Youtubeで検索すると可愛い子供達の歌声が聴くこともできますのでご興味ある方はどうぞ。

東洋と西洋、文化は違っても春を待ち望む気持ちはいずこも同じ。このお祭りの後からやってくる復活祭の頃には北欧の長い冬もそろそろ終わりを告げる時分となります。